欧州のバカンス文化とアグリツーリスモ
- IKEDA IKEDA
- 10月18日
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イタリアには毎年多くの外国人旅行者が訪れています。ここで紹介するのは、2025年夏の夕方5時ごろに撮影したローマ・スペイン階段の風景です。観光客の姿には、家族連れ、夫婦、カップルなどが多く見られ、まさにイタリア観光の縮図ともいえる光景です。

統計を見てもその規模は明らかです。イタリアは2024年に年間約6,400万人の外国人旅行者を受け入れました。日本は同年約3,700万人であり、イタリアは日本の1.7倍にあたります。日本でもオーバーツーリズムが大きな課題となっていますが、イタリアはさらに規模が大きく、観光対策に追われているのです。
さらにフランスは世界最多で、なんと1億人もの外国人旅行者が訪れています。欧州諸国は総じて外国人旅行者数で世界上位を占めていますが、なぜこれほどまでに大きな差があるのでしょうか。


理由のひとつは、欧州域内からの旅行者が大多数を占めていることです。ビジネス渡航もありますが、それ以上に大きいのは「バカンス文化」です。欧州の人々は夏になると1週間以上の長期休暇をとり、都市や田舎をゆっくり楽しむ習慣があります。
バカンスは単なる観光ではありません。たとえば子どもを小さいころからローマに連れて行き、歴史の深さを体験させるのもその一つです。日本の旅行が「物見遊山」的であるのに対し、欧州のバカンスは、歴史や風土、食文化を通じて教育的な意味を持ち、家族や夫婦、カップルが共通の体験を重ね、感性を育むことを目的としています。
人気の場所はローマのような大都市だけではありません。トスカーナ地方の小都市ピエンツァもその代表例です。さらに、ピエンツァからわずか3kmの丘陵地帯には、「Podere Il Casale(ポデーレ・イル・カザーレ)」という農園レストランがあります。名前を直訳すると「農場付き農家」という意味で、いわゆる**アグリツーリズモ(Agriturismo)**と呼ばれる、農業と観光を結びつけた施設です。
Podere Il Casaleには宿泊施設こそありませんが、自家農園で育てたハーブや野菜を使ったオーガニック・ガーデン・レストランを中心に、酪農やチーズ製造、オリーブオイルの生産、直売所、料理教室、農業体験、トリュフ狩り体験など、多彩な活動を展開しています。
テラス席からは美しいドルチャ渓谷を望むことができ、素朴な地元料理とワインを味わうランチは、忘れられない時間となりました。観光都市の華やかさとは異なり、土地の自然と文化を五感で楽しむ、まさにバカンスならではの体験といえるでしょう。





