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トスカーナのルネサンス都市(2)ピエンツァ― 教皇が築いた理想都市

ピエンツァは、シエナから車で約40分、フィレンツェからはおよそ1時間40分の場所に位置する、トスカーナの小さな街です。人口はわずか2,000人ほどですが、その歴史的価値と美しい景観から、近年ますます注目を集めています。


この街の原点は15世紀、中世の時代にさかのぼります。教皇ピウス2世(ピオ二世)が建築家ベルナルド・ロッセリーノに依頼し、自らの故郷を理想都市として整備したことが、今日のピエンツァの姿の始まりです。城門を抜けて歴史的中心街に入ると、一直線に伸びる目抜き通りの中央にピオ広場が広がり、その周囲には大聖堂や市庁舎、そしてピウス2世の邸宅であったピッコローミニ宮殿が今も残っています。広場からはオルチャ渓谷の雄大な風景を望むことができ、さらに進むと城壁沿いに設けられた散策路から、まるで渓谷を見晴らすために用意されたかのような絶景が広がります。レストランのテラス席に腰を下ろし、食事やカフェを楽しみながら景観を眺めれば、心に残るひとときを過ごせるでしょう。


西側の城門であるポルタ・アル・プラート(Porta al Prato)
西側の城門であるポルタ・アル・プラート(Porta al Prato)

この街の原点は15世紀、中世の時代にさかのぼります。教皇ピウス2世(ピオ二世)が建築家ベルナルド・ロッセリーノに依頼し、自らの故郷を理想都市として整備したことが、今日のピエンツァの姿の始まりです。城門を抜けて歴史的中心街に入ると、一直線に伸びる目抜き通りの中央にピオ広場が広がり、その周囲には大聖堂や市庁舎、そしてピウス2世の邸宅であったピッコローミニ宮殿が今も残っています。広場からはオルチャ渓谷の雄大な風景を望むことができ、さらに進むと城壁沿いに設けられた散策路から、まるで渓谷を見晴らすために用意されたかのような絶景が広がります。レストランのテラス席に腰を下ろし、食事やカフェを楽しみながら景観を眺めれば、心に残るひとときを過ごせるでしょう。


目抜き通りであるロッセリーノ通り(Corso Ⅱ Rossellino)
目抜き通りであるロッセリーノ通り(Corso Ⅱ Rossellino)

ピオ広場とサンタマリア大聖堂
ピオ広場とサンタマリア大聖堂

南側の城壁沿いの眺望歩道/パノラマ散歩道とドルチャ渓谷
南側の城壁沿いの眺望歩道/パノラマ散歩道とドルチャ渓谷

ピエンツァの街並みは偶然の産物ではなく、建築家の明確な意図に基づいて計画的に作り替えられました。街路の拡幅や広場の新設、教会の配置換え、家屋の整理などが行われ、都市全体が壮大な舞台のように設計されているのです。そのため、街を歩くだけで、建築と景観が織りなすドラマチックな空間体験を味わうことができます。


街は農産物でも知られており、特に特産のペコリーノ・チーズは今も伝統的な製法で作られ、街の店や市場で販売されています。オリーブオイルの生産も盛んで、土地の恵みを活かした味わいは訪れる人を魅了します。また、ピエンツァは観光地であるだけでなく、産業の発信地でもあります。この地で生まれた「ボッテガ・ヴェルデ」は自然由来の原料を用いた基礎化粧品メーカーとして成長し、今では世界的なボタニカルコスメブランドに発展しました。本社は街の近郊にある伝統的なヴィラを改修した施設に置かれ、ワイナリーや農園とともに運営されています。


ボッテガ・ヴェルデ本社のあるビラと農園
ボッテガ・ヴェルデ本社のあるビラと農園

歴史的中心街(Centro Storico)はユネスコの世界文化遺産に登録されており、街から一望できるオルチャ渓谷の田園風景も含めて世界遺産に指定されています。都市と自然が一体となった中世の景観は、今も息づき、訪れる人々を魅了し続けています。


一度は宿泊を兼ねて訪れ、アグリツーリズモ(農家滞在型観光)を体験すれば、イタリア文化の奥深さに触れることができるでしょう。


そして、ピエンツァのように人口2,000人ほどの小さな街が今も愛されているのには理由があります。観光客は相当数にのぼりますが、彼らは決して物見遊山で訪れているのではありません。その大多数は、ヨーロッパのバカンス文化に支えられ、文化意識の高い人々としてこの地を訪れます。中には一度きりではなく毎年のように訪れ、まるで夏の住まいのように過ごす人々も少なくありません。豊かなカルチャーは、こうしたバカンス文化にしっかりと支えられているのです。

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